賃貸借の連帯保証の書き方:極度額・更新・死亡・敷金

賃貸借の連帯保証人は、保証人が個人であるかぎり、民法でいう個人根保証にあたり、極度額を書面で定めなければ効力を生じません。極度額に加えて、更新、死亡、通知、敷金との関係を、条項にどう落とし込むかを整理します。

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極度額の欄が空欄のまま署名をもらった連帯保証は、保証の部分が効力を生じないおそれがあります。

このページの要点

  • 賃貸借の保証は個人根保証になる。極度額を確定した金額で書面に書き、保証人にだけ課す違約金も極度額に含める。
  • 更新後にも保証が及ぶのかを条項に書き、更新で極度額が増えないことと、更新の通知をすることをセットにする。
  • 借主や保証人の死亡・破産で元本が確定し、その後の債務は保証の対象外になる。新たな保証人を立てる手順を書いておく。
  • 敷金は極度額とは別の枠。どちらから充てるかと、保証人への通知・情報提供の取り決めを条項で決める。

結論:賃貸借の保証は個人なら根保証。極度額・更新・死亡・通知の4点を条項に書く

賃貸借の連帯保証人は、「借りた人が負う賃料その他の債務を、貸主に対して一緒に負う人」です。ここで押さえておくべきことは、賃貸借の保証は、保証人が個人であるかぎり、民法でいう個人根保証契約になるということです。賃料は毎月生じ、原状回復の費用や損害賠償は将来のいつ、いくら生じるか分かりません。「一定の範囲に属する不特定の債務」を保証する契約は根保証契約であり、保証人が法人でないものは個人根保証契約として、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。

「連帯保証人は、借主の一切の債務について責任を負う」と書き、極度額の欄を空けたままにしている賃貸借契約書は、この規定のもとでは、保証の部分が効力を生じないおそれがあります。賃貸借の保証を整えるときは、次の4点を条項と記入欄に落とし込みます。

賃貸借の保証条項で決めておく4点

  • 極度額:確定した金額(または確定できる書き方)で、書面に記載する。賃料が変わっても極度額が動かないことも、書き方で明らかにする。
  • 更新:契約が更新されたときに、保証の効果が更新後にも及ぶのかを書く。更新のたびに極度額が積み上がるのか、契約時の額のままかも決める。
  • 死亡・破産などの元本確定:借主や保証人が死亡したとき、保証人が破産したときなどに、その後に生じる債務は保証の対象外になる。その後の入居の続け方と、新しい保証人の立て方を決めておく。
  • 通知と情報提供:保証人から請求があったときの情報提供、滞納が続いたときの通知を、条文の義務の範囲と契約上の取り決めに分けて書く。

このページは、貸主・管理者の側にも借主の側にも共通する、条項の組み立て方を条文から整理したものです。居住用と事業用でどこが同じでどこが違うかも合わせて扱います。保証全体の地図は保証契約の全体像、極度額の設計そのものは根保証と極度額の書き方で、より詳しく説明しています。

賃貸借の保証が個人根保証になる理由と、極度額の書き方

民法465条の2第1項は、個人根保証契約の保証人は、主たる債務の元本、利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの、およびその保証債務について約定された違約金・損害賠償の額の全部について、極度額を限度として責任を負うと定めています。賃貸借に当てはめると、極度額の中に入るものは、未払いの賃料や共益費、その遅延損害金、原状回復の費用、明渡しが遅れたときの損害賠償、そして保証人についてだけ約定した違約金までが含まれます。つまり、極度額を書いたうえで、保証人に別枠の違約金を上乗せして請求できる、という読み方は成り立ちません。

民法の個人根保証(賃貸借に関係する部分)

  • 465条の2第1項
    極度額が責任の上限元本・利息・違約金・損害賠償その他従たるものと、保証債務についての違約金・損害賠償の額の全部が、極度額を限度とする。
  • 465条の2第2項
    極度額がなければ効力なし個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じない。
  • 465条の2第3項
    極度額の定めも書面で446条2項(書面)と3項(電磁的記録)が、極度額の定めに準用される。
  • 465条の3
    元本確定期日貸金等債務を含む根保証にだけ働く。賃貸借の保証には、この条文の期日の制限はない。
  • 465条の4第1項
    元本確定事由保証人の財産への強制執行・担保権実行の手続開始、保証人の破産、主たる債務者または保証人の死亡。

「民法」の条文です。条文は e-Gov 法令検索で現行のものを確認しています。

極度額の書き方で、よく見られる誤りが三つあります。一つ目は、欄そのものがない、または欄はあるが空欄のままにしている書き方です。二つ目は、「賃料の○か月分」とだけ書き、賃料の改定や更新があったときにどの賃料を基準にするのかが読み取れない書き方です。三つ目は、極度額とは別に「保証人は違約金として賃料の○か月分を支払う」と書く書き方で、上で見たとおり、保証債務の違約金も極度額に含まれます。

書き方の例(一般的な例) 極度額の書き方

極度額の欄

よくある書き方連帯保証人は、借主が本契約に基づいて負う一切の債務を連帯して保証する。(金額の記載なし)
整えた書き方連帯保証人は、借主が本契約に基づいて負う債務について、金○円を極度額として、借主と連帯して保証する。極度額は、賃料の増減があっても変わらない。

理由個人根保証は極度額が必要で、書面に確定して記載する(民法465条の2第2項・3項)。

賃料を基準にする書き方

よくある書き方極度額は賃料の○か月分とする。
整えた書き方極度額は、金○円(契約締結時の月額賃料の○か月相当分)とする。賃料の改定があっても、この額は変わらない。

理由基準になる賃料がどの時点のものかを決め、金額を確定できる形にしておく。

保証人にだけ課す違約金

よくある書き方連帯保証人が支払を遅れたときは、別に違約金として賃料の○か月分を支払う。
整えた書き方保証債務についての違約金・損害賠償を定める場合も、極度額の範囲内であることを明記する。

理由保証債務について約定された違約金・損害賠償の額も、極度額の中に入る(民法465条の2第1項)。

国土交通省が公表している賃貸住宅標準契約書(連帯保証人型。平成30年3月版)は、頭書に連帯保証人の欄と極度額の欄を置いています。連帯保証人の条項では、連帯保証人の負担は頭書および記名押印欄に記載する極度額を限度とすること、極度額は賃料の増減があっても変わらず契約時の額が適用されることが、記入の案内に示されています。極度額の記載方法の例としては、「円(契約時の月額賃料の何か月相当分)」「契約時の月額賃料の何か月分」「円」などが挙げられています。書き方の型を学ぶうえで、公的な資料として参考になります。

極度額をいくらにするか:条文は基準を置かない。公表資料は参考にとどまる

民法は、極度額の金額について基準を置いていません。いくらにするかは、貸主と保証人になる人の話合いで決める事項です。国土交通省は、極度額を決める際の参考として「極度額に関する参考資料」を公表しており、その中で、具体的な極度額の設定にあたっては関係当事者間で充分協議を行うことが必要であると述べています。

この資料のうち、保証人の負担額に関する調査は、民間賃貸住宅の賃貸借契約で連帯保証人に負担を命じた裁判所の判決を対象にしています。対象は91件で、使用目的が居住目的のみであるものが抽出されています。この調査では、判決で確定した連帯保証人の負担総額は、平均で月額家賃等の約13.2か月分(最小は2か月分、中央値は12か月分、最大は33か月分)でした。負担総額には、未払いの賃料のほか、原状回復費用や損害賠償費なども含まれます。

確認の問いと理由極度額を決める前に確かめること

  1. 想定する債務は、賃料の滞納だけか、原状回復や明渡しの遅れまで含むか。

    極度額は賃料以外の債務も含めた上限になる。想定する債務の種類で、必要な額の見立てが変わる。

  2. 居住用か事業用か。

    公表されている判決の調査は居住用の民間賃貸住宅のものである。事業用は賃料も原状回復の範囲も異なり、そのまま当てはめられない。

  3. 保証人になる人が、極度額の意味を理解して署名できる説明をしているか。

    極度額は保証人が最悪の場合に負担する上限である。保証人が理解しないまま署名した契約は、後で争いになりやすい。

  4. 極度額を超える部分の担保は、他に(敷金など)あるか。

    極度額を超える債務は保証人に請求できない。超える部分は、敷金や別の方法で手当てできるかを見ておく。

裁判所の判決の調査は、あくまで過去の判決の分布です。極度額を決める根拠にはなりますが、「この額にすれば有効」という基準ではありません。

更新と保証の範囲:更新後にも保証が及ぶのかを書く

賃貸借は、期間が満了しても、契約が更新されて続くことがよくあります。更新の形には、当事者が合意して更新する場合のほか、建物の賃貸借で期間の定めがあるときに、更新しない旨などの通知が期間満了の一年前から六月前までの間になかったために従前と同一条件で更新したものとみなされる場合(借地借家法26条1項)や、期間が満了した後に借主が使用を続け、貸主が遅滞なく異議を述べなかった場合(同条2項)があります。民法619条1項にも、期間満了後に借主が使用を継続し、貸主が知りながら異議を述べないときは、従前と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する規定があります。

そこで、更新後にも保証人の責任が及ぶのかが問題になります。民法619条2項は、従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は期間の満了によって消滅する、ただし敷金についてはこの限りでない、と定めています。この規定は、更新後にも保証人が責任を負うのかという点で、条文の読み方が問われる場面です。国土交通省の賃貸住宅標準契約書の解説では、賃貸借契約の更新があった場合にも、特段の事情がないかぎり連帯保証契約の効力が及ぶと解されていると述べ(最高裁判所の平成9年11月13日の判決が引用されています)、保証契約の効果が更新後にも及ぶことを契約書の条項に明記しています。同じ解説は、借主が継続的に支払を怠っているのに貸主が保証人に通知せず、いたずらに更新させている場合には、保証債務の履行の請求が信義則に反して否定されることがあり得るとも述べ、更新の際に保証人へ通知することが望ましいとしています。

これらは、更新と保証の関係が、条文だけでなく裁判例の考え方にも関わることを示しています。個別の事案への当てはめは、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。そのうえで、契約書の条項としては、次の三つを明記しておくのが、紛争を減らす書き方です。

書き方の例更新と保証の関係を書く条項の例

  1. 連帯保証人は、借主と連帯して、本契約から生じる借主の債務を負担する。本契約が更新された場合においても、同様とする。
  2. 前項の連帯保証人の負担は、契約書に記載する極度額を限度とし、更新によって極度額は増加しない。
  3. 貸主は、本契約を更新したときは、遅滞なく、連帯保証人に更新した旨を通知する。

「更新後も保証する」と書くことは、極度額が更新ごとに増えないこと、更新の通知をすることとセットで書くと、保証人に分かりやすい条項になります。特定の契約の条項を引用したものではなく、一般的な書き方の例です。

定期建物賃貸借(更新がないことを定める賃貸借。借地借家法38条1項)では、期間が満了すると契約は終了し、更新はありません。同じ建物を再び貸すときは、新たな賃貸借契約を結ぶため、保証人についても新たな保証契約(書面、極度額)を結ぶ形で整理するのが自然です。「再契約をしたときにも、従前の保証が続く」と読める書き方をしている場合は、極度額と書面の要件を満たすかを見直します。

借主や保証人が亡くなったとき、保証人が破産したとき:元本確定

民法465条の4第1項は、個人根保証契約の元本が確定する場合として、(1)債権者が保証人の財産について強制執行または担保権の実行を申し立て、その手続が開始されたとき、(2)保証人が破産手続開始の決定を受けたとき、(3)主たる債務者または保証人が死亡したとき、を挙げています。元本が確定すると、その後に生じる債務は保証の対象になりません。賃貸借の保証に当てはめると、借主が亡くなった後に生じる賃料や、その後の明渡しに伴う債務は、保証人の責任の範囲に入らないのが基本的な考え方です。国土交通省の標準契約書の解説も、借主の死亡時までに生じている債務についてのみ(極度額を限度として)責任を負い、借主の死亡後の賃料は保証人の責任範囲に含まれないと考えられると述べています。ただし同じ解説は、具体的な責任範囲は事案や解釈によって異なり得るので、民法改正後の裁判例の蓄積が待たれるとしています。条文と所管官庁の資料で確認が必要な部分は、ここです。

借主が亡くなったときの流れ(賃貸借の保証)

1借主の死亡賃借権は相続の対象になり、相続人が賃貸借を引き継ぐ場合がある(民法896条)。
2元本の確定保証の元本は、借主の死亡時に確定する(民法465条の4第1項3号)。
3その後の債務死亡後に生じる賃料などは、旧来の保証の対象外と整理される。
4新たな保証相続人が賃貸借を続けるなら、新たな保証契約(書面・極度額)を結ぶかを決める。

「相続人が引き継ぐのだから、保証も自動的に続く」とは整理できません。入居を続けるなら、あらためて保証人を立てる流れを条項に書いておきます。

賃貸借の保証には、貸金等債務が含まれないため、元本確定期日の規定(民法465条の3)は適用されません。つまり、期間を区切らない保証が、条文のうえで直ちに効力を失うことはありません。ただし、更新を重ねて長期にわたる場合の保証人の負担は大きくなるので、契約書では、保証の期間をどう考えるかを検討する価値があります。賃貸借の保証が、貸付けなどの貸金等債務を含む「一切の債務」の保証に広がっていないかは、確認しておくとよいでしょう。

保証人の側に死亡や資力の喪失があった場合の扱いは、保証人を立てる義務の規定(民法450条)に関わります。債務者が保証人を立てる義務を負う場合、保証人は行為能力者で、弁済をする資力を有する者でなければならず(同条1項)、保証人が資力を欠くに至ったときは、債権者は要件を備える者への代替を請求できます(同条2項)。ただし、債権者が保証人を指名した場合は、これらの規定は適用されません(同条3項)。貸主が保証人を指名して賃貸借を結ぶ場合には、条文の代替請求に頼ることができないため、「保証人が死亡したとき、破産したとき、資力を失ったときは、借主は直ちに新たな保証人を立てる」旨を、契約書に書いておく必要があります。保証人の変更の全体は保証人の変更・差替え・解除で扱っています。

保証人への通知と情報提供:条文の義務と、契約で上乗せする取り決め

保証人への情報提供には、条文が義務として定めているものと、契約で任意に取り決めるものがあります。賃貸借に関係するものを分けて整理します。

賃貸借の保証と情報提供

場面条文内容賃貸借での書き方
保証人から請求があったとき民法458条の2委託を受けた保証人から請求があったとき、債権者は遅滞なく、主たる債務の元本・利息・違約金等の不履行の有無、残額、弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供する。貸主が情報提供する旨を条項に書き、書面または電子メールで行う運用を決めておく。
期限の利益を失ったとき民法458条の3期限の利益を喪失したことを知った時から2か月以内に保証人に通知しなければならず、通知しないと、喪失時から通知時までの遅延損害金は保証人に請求できない。法人が保証人の場合は適用がない。賃料は月ごとに弁済期が来る債務で、通常は期限の利益の喪失は生じにくい。一括払いや違約金の一括請求を定めた場合は、この通知の対象になるかを確認する。
契約を結ぶとき民法465条の10事業のために負担する債務を主たる債務とする保証を委託するとき、主たる債務者は、財産・収支の状況などを委託を受ける人に伝える。取消しの定めもある。居住用では通常は適用されない。事業用では、借主の事業のための賃料債務の保証にあたる場合に確認する。
滞納が続いたとき条文にはない条文は、請求がなくても滞納を知らせることまでは求めていない。「滞納が○か月続いたときは、保証人に通知する」といった取り決めを、契約で追加することも考えられる。

最後の「契約で追加する」取り決めは、保証人を守る意味だけでなく、貸主にとっても利益があります。滞納が長期にわたってから、突然、保証人に巨額の請求をすると、保証人から信義則上の主張を受けるおそれがあります。早い段階で通知する運用は、貸主と保証人の双方にとって、紛争を小さくします。情報提供の詳しい整理は保証人への情報提供義務のページにまとめています。

もう一点、公正証書の要否も確認しておきます。民法465条の6は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証などに公正証書を要求していますが、貸金等債務は金銭の貸渡しまたは手形の割引によって負担する債務を指します(同法465条の3第1項)。賃料債務は、これにあたりません。したがって、賃貸借の保証そのものには、通常は公正証書は要りません。ただし、保証の範囲に貸付金などが混ざる「一切の債務」の書き方になっていると、貸金等債務が含まれるものとして、元本確定期日や公正証書の規定の対象になり得ます。この点からも、賃貸借の保証は、賃貸借から生じる債務に範囲を限る書き方が望ましいといえます。

敷金との関係:どちらから充てるか、極度額の外か中か

賃貸借には、敷金が預けられることが多くあります。民法622条の2第1項は、敷金を「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義し、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときなどに、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を返還しなければならないと定めています。同条2項は、借主が債務を履行しないとき、貸主は敷金を債務の弁済に充てることができる、借主の方から敷金を弁済に充てるよう請求することはできない、と定めています。

つまり、敷金を滞納賃料に充てるかどうかは、貸主が選べる事項です。保証人がいる場合、「保証人に請求する前に、敷金を充てるべきだ」という主張が出ることがあります。条文は、敷金を充てる義務を貸主に課していません。この点は条項で取り決めておくと、あとの争いを減らせます。

書き方の例(一般的な例) 敷金と保証の関係の書き方

充当の順序

よくある書き方借主が賃料を滞納したときは、貸主は、敷金から充当し、不足があれば連帯保証人に請求する。
整えた書き方借主に債務の不履行があるとき、貸主は、敷金を債務の弁済に充てることができる。貸主が敷金を充てないことは、連帯保証人の責任を軽くしない。

理由民法622条の2第2項は、充当を「できる」と定める。順序を決めるなら、どの債務にどう充てるかまで書く。

極度額との関係

よくある書き方連帯保証人の責任は極度額による。敷金は別途返還する。
整えた書き方極度額は、敷金の額とは別に定める。敷金を充当した後の債務について、保証人は極度額を限度に責任を負う。

理由敷金は借主の預けた金銭で、保証人の責任の上限とは別の枠。どちらに先に充てるかで、保証人の実際の負担が変わるため、明記する。

貸主の交代

よくある書き方貸主が変わったときの保証は触れない。
整えた書き方貸主の地位が移転した場合の保証の扱いも、新しい貸主に保証が引き継がれることを前提に記載する。

理由賃貸人の地位が譲受人に移転したとき、敷金の返還債務は譲受人が承継する(民法605条の2第4項)。保証の承継は条文と所管官庁の資料で確認が必要。

場面別:賃貸借の保証で起きがちなことと整え方

居住用の普通借家

起きがちなこと個人の保証人に、極度額を決めずに署名させている。更新のたびに保証人へ何も知らせず、滞納が長引いてから請求する。
整え方極度額を確定した金額で書面に記載し、更新の通知と滞納時の通知を取り決める。借主が亡くなった場合の新たな保証の立て方も書く。

事業用の賃貸借

起きがちなこと賃料が高額で、原状回復の範囲も広いのに、居住用の書き方をそのまま使い、極度額が過小または空欄になっている。
整え方事業用は賃料も原状回復の範囲も異なる前提で、極度額を個別に決める。事業のための債務にあたる場合は、契約時の情報提供の確認も入れる。

期限付き(定期借家)

起きがちなこと期間満了後の再契約でも、前の保証がそのまま続くと考えて、新たな書面を取らない。
整え方再契約は新たな賃貸借として、保証契約も新たに書面で結ぶ。極度額も定め直す。

法人が保証人(保証会社など)

起きがちなこと個人の保証人向けの規律を、そのまま法人にも当てはめている。
整え方極度額・情報提供の一部の規定は、法人の保証人には適用されない(民法465条の2の個人根保証、458条の3第3項など)。保証人が個人か法人かで、条項を分ける。

賃貸管理の側の家賃保証や緊急連絡先の運用は、このページでは扱いません。

賃貸借の保証で起きがちなこと

  • 極度額の欄が空欄のまま、または欄がないまま署名をもらい、保証部分の効力を主張できなくなる。
  • 極度額を書いたうえで、保証人にだけ別の違約金を課し、極度額を超える請求をしてしまう。
  • 借主が亡くなった後の賃料や明渡しの費用を、従前の保証にそのまま請求してしまう。
  • 更新時に保証人へ何も知らせず、滞納が長期化してから、はじめて請求の連絡をする。
  • 保証人の死亡や資力の喪失があっても、代わりの保証人を立てる手順が契約書にない。
  • 賃貸借の保証の範囲を「一切の債務」と書き、貸付金のような債務まで読める文言にしてしまう。

よくあるご質問

賃貸借の連帯保証人の極度額は、何か月分にすればよいですか。

民法は極度額の基準を定めていません。国土交通省が公表している参考資料は、居住用の民間賃貸住宅で連帯保証人に負担を命じた判決の調査として、負担総額が平均で月額家賃等の約13.2か月分だったと示していますが、これは過去の判決の分布であり、有効無効の基準ではありません。賃料、想定する債務の範囲、居住用か事業用かを踏まえて、関係当事者が協議して決めます。

極度額の欄が空欄のまま署名してもらった保証は、有効ですか。

個人が保証人になる根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。極度額の定めも書面でする必要があります(同条3項)。空欄のままの場合は、保証の効力を主張できないおそれがあります。契約書の整え直しは、新たな書面で行う必要があります。

契約が更新されたら、連帯保証人の責任も続きますか。

国土交通省の標準契約書は、更新があった場合にも、特段の事情がないかぎり連帯保証契約の効力が及ぶと解されていることを前提に、更新後にも保証が及ぶことを条項に明記しています。個別の場面は、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。契約書には、更新後にも保証が及ぶこと、極度額が増えないこと、更新の通知をすることを書いておくと、争いを減らせます。

借主が亡くなったあとの賃料を、連帯保証人に請求できますか。

個人根保証契約では、主たる債務者の死亡で元本が確定し(民法465条の4第1項3号)、その後に生じる債務は保証の対象になりません。標準契約書の解説も、借主の死亡後の賃料は保証人の責任範囲に含まれないと考えられると述べています。具体的な責任範囲は事案や解釈により異なり得るため、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。

賃貸借の保証でも、公正証書は必要ですか。

公正証書が必要になるのは、事業のために負担した貸金等債務(金銭の貸渡しなど)を主たる債務とする保証などです(民法465条の6)。賃料債務は貸金等債務ではないため、賃貸借の保証そのものでは、通常は公正証書は要りません。ただし、保証の範囲に貸付金のような債務が含まれる書き方になっている場合は、確認が必要です。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の保証契約への当てはめは、契約書の文言、主たる債務の内容、当事者の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。判例や所管官庁の資料は、原文を確認できたものだけを取り上げています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 国土交通省 / 金融庁

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