このページの要点
- 債権者が保証人を指名した場合、民法450条の代替請求は適用されない。事由・期限・要件を契約書に書く。
- 個人根保証は、保証人や主たる債務者の死亡、保証人の破産などで元本が確定する。確定後の債務は保証の対象外。
- 保証人の一方的な解約を認める一般的な条文はない。撤回できない旨の条項の限界は、条文と所管官庁の資料で確認が必要。
- 差替えは、旧保証人との合意解除(解除日までの債務の扱いを明記)と、新たな保証契約(書面・極度額)に分けて整える。
結論:保証人の変更は、条文の代替請求に頼らず、契約書に「立て直す手順」を書いておく
保証契約を結んでからしばらくして、保証人が亡くなった、破産した、資力がなくなった、あるいは「もう保証をやめたい」と申し出た、という場面が生じます。契約書に何も書いていないと、債権者は新しい保証人を求める根拠を条文の中に探すことになりますが、民法の規定には使える場面と使えない場面があります。特に、債権者が保証人を指名した契約では、民法450条の代替請求の規定は適用されません(同条3項)。
このページで整理する内容は、次のとおりです。
保証人の変更・解除で押さえる点
- 保証人を立てる義務の規定(民法450条)は、債権者が保証人を指名した場合には適用されない。契約書に代替の手順を書く必要がある。
- 個人根保証では、保証人の死亡・破産などで元本が確定する(民法465条の4)。その後に生じる債務は保証の対象にならないので、契約の差替えが必要になる。
- 保証人の一方的な解約を認める一般的な条文は、民法の保証の規定にはない。「撤回・解除できない」と書く条項の効力の限界は、条文と所管官庁の資料で確認が必要。
- 合意解除や差替えは、解除の日までに生じた債務の扱いを明記した書面で行う。
- 新しい保証人との契約は、新たな保証契約として、書面・極度額・情報提供の要件をそろえ直す。
保証契約の基本的な要件は保証契約の書面の要件と書き方、根保証の元本確定は根保証と極度額の書き方で整理しています。賃貸借の保証人の変更に特有の点は賃貸借の連帯保証の書き方にあります。
保証人を立てる義務と代替請求:民法450条と451条
民法450条は、債務者が保証人を立てる義務を負う場合について、その保証人が備えるべき要件を定めています(同条1項)。保証人は、行為能力者であること、弁済をする資力を有することが必要です。保証人が資力を欠くに至ったときは、債権者は、要件を備える者をもってこれに代えることを請求できます(同条2項)。債務者が要件を備える保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができます(同法451条)。
保証人を立てる義務の規定(民法)
- 450条1項保証人の要件債務者が保証人を立てる義務を負う場合、保証人は、行為能力者で、弁済をする資力を有する者でなければならない。
- 450条2項代替の請求保証人が資力を欠くに至ったときは、債権者は、要件を備える者に代えるよう請求できる。
- 450条3項指名した場合は適用なし債権者が保証人を指名した場合には、1項・2項は適用されない。
- 451条他の担保による代替要件を備える保証人を立てられないときは、債務者は他の担保を供して代えることができる。
「民法」の条文です。
表の3行目が、実務で最も重要な点です。契約を結ぶとき、債権者(貸主、取引の相手方)が「この人を保証人にしてほしい」と指名した場合には、民法450条1項・2項の要件と代替請求の規定は働きません。ですので、債権者が保証人を指名する契約では、保証人が死亡したり資力を失ったりしたときにどうするかを、契約書に書いていなければ、条文だけを根拠に代わりの保証人を求めることはできないことになります。
書き方の例(一般的な例) 保証人の代替に関する条項の書き方
代替保証人を求める事由
理由「変更」という語だけでは、どの事由で、いつまでに、誰を立てるのかが不明確。事由と期限を書く。
代わりの保証人の要件
理由450条1項の要件を契約に書き込み、書面・極度額の要件(446条2項、465条の2)をそろえる。
立てられないとき
理由他の担保での代替(451条)を契約に取り込んでおくと、手段が明確になる。
元本確定事由:保証人の死亡・破産、主たる債務者の死亡のあとに何が起きるか
個人根保証契約では、民法465条の4第1項により、次の場合に主たる債務の元本が確定します。(1)債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行または担保権の実行を申し立てたとき(ただし、手続の開始があったときに限る)、(2)保証人が破産手続開始の決定を受けたとき、(3)主たる債務者または保証人が死亡したとき。貸金等債務を含む個人根保証では、さらに、債権者が主たる債務者の財産について強制執行等を申し立てて手続が開始したとき、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたときにも確定します(同条2項)。
元本確定事由と、その後に必要になること
| 事由 | 条文 | 確定したあとの状態 | 契約書で備えること |
|---|---|---|---|
| 保証人の財産への強制執行・担保権実行の手続開始 | 465条の4第1項1号 | その後に生じる債務は保証の対象外 | 保証人が資力を欠くことを含めて、代替の保証人の手順を書く |
| 保証人の破産手続開始 | 465条の4第1項2号 | 同上 | 新たな保証人を立てる期限と、要件を書く |
| 主たる債務者の死亡 | 465条の4第1項3号 | 死亡時までの債務のみ保証の対象 | 入居や取引を続ける相続人がいるなら、新たな保証を立てる流れを書く |
| 保証人の死亡 | 465条の4第1項3号 | 死亡時までの債務のみ保証の対象(相続人が引き継ぐ範囲は後述) | 保証人の死亡の通知先と、新たな保証人を立てる手順を書く |
| (貸金等根保証)主たる債務者の強制執行・破産 | 465条の4第2項 | 貸金等債務を含む根保証でのみ確定 | 貸付けを含む保証では、この事由も前提に条項を整える |
元本が確定した後も、確定時までに生じていた債務に係る保証債務は残ります。債権者としては、確定の事実を知ったときに、その時点の債務の残額を整理し、取引を続けるなら新たな保証契約を結ぶ、という流れで対応することになります。確定した元本には、新たな債務は加わりません。「保証人の死亡後も保証は続く」と読める書き方をしていても、465条の4第1項3号と食い違う部分は、条文のとおりに整理されます。
保証人が亡くなったとき:相続の扱いは条文と所管官庁の資料で確認
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではありません(民法896条)。保証債務は、一般には、被相続人の財産に属する義務として相続の対象になり得ます。他方、個人根保証では、保証人の死亡によって元本が確定します(民法465条の4第1項3号)。そのため、相続人が引き継ぐ保証債務の範囲は、保証人の死亡時までに生じていた債務に係るもの(極度額が上限)と整理するのが、一般的な考え方です。死亡後に生じた債務は、確定のあとの債務であり、保証の対象に入りません。
個別の事案で、相続人がどこまで引き継ぐかは、保証の種類(特定の債務の保証か、根保証か)、死亡の時点、相続人の状況によって異なるため、条文と所管官庁の資料で確認が必要な部分です。なお、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならず(民法915条1項)、相続の放棄をした者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます(同法939条)。相続の承認や放棄の手続そのものは、保証契約の書き方の話ではないため、このページでは扱いません。
確認の問いと理由「相続人に承継される」と書くときの確認
相続人が引き継ぐ範囲を、根保証の元本確定と合わせて書けているか。
保証人の死亡で元本が確定するので、「死亡後の債務も相続人が負う」と読める書き方は、条文と合わない。
「承継する」と書くことで、保証人が得る説明になっているか。
条項は、相続人に請求できる債務の範囲を示す書類にもなる。範囲を曖昧にしたままだと、相続人から争われやすい。
相続人への連絡の手順を決めているか。
保証人の死亡を債権者が知らないまま、請求や通知が届かないことがある。死亡の通知を保証人側の親族から受ける取り決めを置く。
保証人から「やめたい」と言われたとき:合意解除と、一方的な解約の限界
民法の保証の規定には、保証人が一方的に保証契約を解約できるという一般的な条文はありません。契約の内容は、法令の制限内で当事者が自由に決められる(民法521条2項)ので、債権者と保証人が合意すれば、保証契約を解除(合意解除)できます。これは条文を必要としません。一方、保証人が債権者の同意なく契約を解約できるかどうか、特に期間の定めのない継続的な保証について、保証人の事情が大きく変わった場合に解約が認められるかどうかは、裁判所の判断にも関わる論点です。個別の事情によって結論が分かれうる論点のため、実際に解約を考えるときは、契約書の定めと事情を整理して検討します。
契約書に「保証人は、本契約を撤回、解除、解約できない」と書く例があります。債権者の立場では、保証人が簡単に抜けられないよう備える趣旨でしょう。しかし、この文言が、事情が大きく変わったときの保証人の主張まで排除できるかは別の問題です。書くとしても、次の点を整理しておくと、後の争いを減らせます。
書き方の例(一般的な例) 撤回・解除に関する条項の書き方
撤回・解除の制限
理由一律の禁止は、事情が大きく変わった場合の保証人の主張の余地を残す。申出があったときの手順を決めておく方が、実際の運用に合う。
解除の日までの債務
理由解除前の債務を残すのか免れるのかで、合意の内容が大きく変わる。書面に明記しないと、後で争いになる。
解除の方式
理由保証契約の成立は書面が要件(446条2項)。解除の合意も書面に残す方が、証拠として有力な材料になる。
主たる債務の条件が変わるとき:保証人への通知と同意をどう扱うか
保証人の「変更」には、保証人そのものが入れ替わる場合のほかに、主たる債務の側の条件が変わって、保証人の立場が変わる場合があります。返済の猶予、分割払いへの変更、支払条件や利率の変更、取引の範囲の拡大、契約の更新などです。民法448条2項は、主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されないと定めています。したがって、債権者と主たる債務者が、保証人の知らないうちに条件を厳しくしても、その加重された部分は保証人に及びません。
反対に、返済の猶予のように、主たる債務者に有利で、保証人の負担を重くしない変更は、保証人の同意がなくても行えるのが基本です。ただし、保証人にとっては、主たる債務者が払えない状態が長引くことで、将来の請求額が大きくなるおそれがあります。債権者が変更を保証人に知らせるかどうかは、条文上の義務ではありませんが、後の争いを防ぐ観点では、書面で知らせておく価値があります。
主たる債務の条件変更と保証人(一般的な整理)
| 変更の内容 | 保証人への影響 | 契約書での備え |
|---|---|---|
| 返済の猶予・分割払いへの変更 | 保証人の負担を重くしない変更。保証人の同意がなくても行える | 変更したときは、保証人に書面で知らせる旨を書いておく |
| 利率・違約金の引上げ | 保証契約の締結後に加重された部分は、保証人に及ばない(民法448条2項) | 引上げ分を保証人に及ぼしたいときは、保証人の個別の合意を、書面で取る |
| 取引の範囲の拡大 | 保証した範囲を超える部分は、保証の対象外 | 範囲を広げるなら、新たな保証契約(書面・極度額)を結ぶ |
| 契約の更新 | 更新後に保証が及ぶのかは、契約書の書き方と事案による | 更新後も保証が続くこと、極度額が増えないこと、更新の通知を書く |
| 極度額の引上げ | 極度額の定めは書面でするものとされる(民法465条の2第3項) | 保証人が引上げに同意する書面を、新たに取る |
契約書には「保証人は、主たる債務の条件が変更されても、異議なく同意する」と書く例が見られます。この種の事前の包括的な同意文言が、どこまで効力を持つかは、民法448条2項との関係で、整理が必要です。保証人が将来の変更の内容を知らないまま、白紙に近い形で同意したと読めるときは、保証人が同意した範囲が争いになりやすくなります。条文との関係は保証する範囲と条件変更で詳しく整理しています。保証人に変更があった場合の通知の運用そのものは、契約書に「債権者は、主たる債務の条件を変更したときは、遅滞なく保証人に通知する」と書くことで、明確にできます。
保証人を変更・差替えするときの手順と書面
保証人の変更は、旧保証人の保証を解除(または元本の確定を確認)し、新しい保証人と新たな保証契約を結ぶ、という二つの作業から成ります。この二つを一枚の書面にまとめる「差替え契約書」を作る例もありますが、新しい保証契約の要件(書面、極度額、必要に応じた情報提供)を満たす部分と、旧保証人との合意解除の部分は、分けて書く方が、後で読み返したときの整理がつきます。
保証人を差し替えるときの流れ
新しい保証人が、事業のための貸金等債務の保証を引き受けるときは、公正証書の規定も確認します(民法465条の6)。
極度額を増額するときも、新しい書面で定めるものとして扱うのが、安全な設計です。極度額の定めは書面でしなければならないとされており(民法465条の2第3項)、増額は、保証人の負担を重くする変更だからです。保証人が増額に同意する旨の書面を、新たに取っておきます。更新の際の極度額の扱いは、賃貸借の連帯保証の書き方でも整理しています。
書き方の例保証人の差替えに関する合意の条項の例
- 旧保証人と債権者は、令和○年○月○日をもって、旧保証人の連帯保証契約を合意により解除する。
- 旧保証人は、前項の解除の日までに生じた借主(主たる債務者)の債務について、極度額の範囲で責任を負う。(または、責任を負わない。)
- 新保証人は、借主の債務について、金○円を極度額として、借主と連帯して保証する。
- 新保証人は、前項の保証契約の内容および借主の債務の状況について、債権者から説明を受けたことを確認する。
一般的な書き方の例です。第2項は、解除前の債務を旧保証人が引き続き負うのかを、当事者間でどちらにするか決めて書く部分です。金額・日付は○としています。
場面別:保証人の変更で起きがちなことと整え方
保証人が亡くなった
保証人の資力が悪化した
保証人が保証をやめたいと言った
契約が更新され、保証人も代わる
雇用の身元保証や、高齢者の身元保証は、このページでは扱いません。
保証人の変更・解除で起きがちなこと
- 債権者が保証人を指名したのに、民法450条の代替請求で足りると考えている。
- 保証人の死亡後の債務を、相続人にまとめて請求してしまう。
- 「いかなる理由でも解除できない」と書けば、保証人が抜けられないと思い込む。
- 合意解除の書面に、解除の日までの債務の扱いを書かず、後で争いになる。
- 差替えのとき、新しい保証契約に極度額を書かず、書面の要件を満たさない。
- 極度額を増やすのに、新しい書面を取らず、口頭の了解で済ませる。
よくあるご質問
保証人が亡くなったら、保証はどうなりますか。
個人根保証では、保証人の死亡によって元本が確定し(民法465条の4第1項3号)、その後に生じる債務は保証の対象になりません。相続人が引き継ぐのは、死亡時までに生じていた債務に係る保証債務と整理するのが一般的です。具体的な範囲は、保証の種類や死亡の時点によって異なるため、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。
保証人が資力を失ったら、代わりの保証人を求められますか。
債務者が保証人を立てる義務を負う場合に、保証人が資力を欠くに至ったときは、債権者は要件を備える者への代替を請求できます(民法450条2項)。ただし、債権者が保証人を指名した場合には適用されません(同条3項)。指名した契約では、契約書に代替の条項を書いておく必要があります。
保証人が一方的に保証をやめることはできますか。
民法の保証の規定には、保証人が一方的に解約できる一般的な条文はありません。債権者との合意があれば合意解除できます。事情が大きく変わった場合の扱いは、裁判所の判断に関わる論点で、条文と所管官庁の資料で確認が必要な部分です。
契約書に「撤回できない」と書けば、保証人は抜けられませんか。
書くこと自体は契約自由の範囲ですが、事情が大きく変わった場合の保証人の主張まで排除できるかは別の問題です。申出があったときの手順と、解除日までの債務の扱いを決めておく方が、実際の運用に合います。
保証人を差し替えるとき、新しい保証契約に必要なものは何ですか。
保証契約は書面でしなければ効力を生じません(民法446条2項)。個人根保証なら極度額も書面で定める必要があります(同法465条の2)。事業のための貸金等債務の保証なら公正証書も確認します(同法465条の6)。旧保証人の極度額に上乗せする形ではなく、新たな契約として整えます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の保証契約への当てはめは、契約書の文言、主たる債務の内容、当事者の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。判例や所管官庁の資料は、原文を確認できたものだけを取り上げています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 国土交通省 / 金融庁