このページの要点
- 保証契約は書面でしなければ効力を生じない(民法446条2項)。電磁的記録でも書面とみなされる(同条3項)。
- 条文は署名や押印を要件としていないが、保証人の意思を証明するため通常は求める。
- 書面から、債権者・主たる債務者・主たる債務・保証する旨・連帯の旨が読み取れるようにする。
- 極度額と元本確定期日の定めにも書面の要件が準用される(同465条の2第3項、465条の3第4項)。
結論:書面がなければ保証は効力を生じない。書面からは「誰が・何について・どう保証するか」が読み取れるようにする
民法446条2項は、保証契約は書面でしなければ、その効力を生じないと定めています。口頭で「保証する」と言っても、メールで軽く「大丈夫です」と答えても、書面(または後述する電磁的記録)が整っていなければ、保証としての効力を主張することはできません。債権者の側からすれば、保証人を付けたつもりでも、書面の不備で保証がなかったことになる、という事態が起こり得る規定です。
もう一つ大切なのは、条文が書面に記載すべき事項を列挙していないことです。「書面があれば何を書いてもよい」という意味ではなく、保証の趣旨を保証人の意思として書面に表したといえる内容が必要だと考えて書くのが安全です。このページでは、条文の確認できる範囲(446条、465条の2第3項、465条の3第4項)と、契約書の書き方の実務的な観点を分けて整理します。
このページで押さえる要点
- 書面を欠く保証契約は、効力を生じない(民法446条2項)。電磁的記録によるときは、書面とみなされる(同条3項)。
- 条文は、署名や押印を要件としていない。ただし、後から保証人の意思を証明するために、署名と押印を求めるのが通常の運用。
- 書面から、債権者・主たる債務者・主たる債務・保証する旨が読み取れるようにする。
- 個人根保証の極度額の定めも、書面または電磁的記録でする必要がある(同465条の2第3項)。
- 主たる債務の契約書の末尾に署名欄を足すだけの形は、読み取れる内容が足りなくなりやすい。
446条2項・3項の読み方:何が「書面」で、何が書かれていなければならないか
民法446条は、3つの項で構成されています。1項は「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」と保証の基本を定め、2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と書面を要求し、3項は「保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する」と電磁的記録の場合を扱います。
書面を要求する趣旨は、保証が、親族や知人の情義から軽い気持ちで引き受けられやすいのに、のちに重い責任として現れる契約だからだ、と一般に説明されます。書面にすることで、保証人が自分の引き受ける責任の内容を認識し、慎重に判断する機会を設けるのです。この趣旨から、保証人の側の意思表示が書面でされていることが重視されます。
書面の要件に関わる条文(民法)
- 446条2項書面の要件保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
- 446条3項電磁的記録保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなす。
- 465条の2第3項極度額の定め個人根保証契約の極度額の定めにも、446条2項・3項を準用する。
- 465条の3第4項元本確定期日の定め個人貸金等根保証契約の元本確定期日の定めとその変更にも、446条2項・3項を準用する(一定の場合を除く)。
- 521条・522条2項契約の自由と方式契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
条文は現行の規定に基づいています。
条文には、書面に署名や押印をしなければならないとは書かれていません。署名や押印は、書面の要件そのものではなく、保証人本人が作成した書面であることを後から証明するための実務上の手当てです。署名のない書面や、保証人以外の人が保証人の名前を書いた書面は、保証人の意思表示を表した書面といえるかが争われやすく、要件を満たすかどうかの判断が難しくなります。
書面の形式にも決まりはなく、契約書でも、承諾書でも、差入書でも構いません。大切なのは、その書面が保証契約の内容を示しているかどうかです。債権者が作成した契約書に保証人が署名する形のほか、保証人が作成して債権者に差し入れる書面も、実務ではよく使われます。いずれの形でも、保証人の意思が書面に表れているかが問われますが、個別の書面がその評価に足りるかは、条文だけでは答えが出ません。判例や所管官庁の資料で確認が必要な部分です。
書面に書いておきたい項目:最低限と、あると安全なもの
書面に何を書けばよいかについて、条文は定めを置いていません。そこで、後から保証人の意思や範囲が争われないよう、次のような項目を書くのが一般的な運用です。
保証の書面に書く項目と理由
| 項目 | 書き方の観点 | 書かない場合に起きやすいこと |
|---|---|---|
| 債権者 | 名称・住所。誰に対する保証かを特定する。 | 誰の債権を保証したのかが不明確になる。 |
| 主たる債務者 | 名称・住所。誰の債務を保証するかを特定する。 | 誰の債務についての保証かが争われる。 |
| 主たる債務 | 契約の名称、締結日、債務の内容、金額や範囲を特定する。 | 保証の範囲が不明確になり、保証人の意思が及ぶ範囲を巡って争われる。 |
| 保証する旨 | 「主たる債務者が履行しないときに、保証人が履行の責任を負う」趣旨を書く。 | 保証契約としての意思表示が書面に表れていないと評価される。 |
| 連帯の旨 | 連帯保証なら「主たる債務者と連帯して」と書く。 | 通常の保証と読まれ、催告の抗弁・検索の抗弁が残る(452条・453条・454条)。 |
| 極度額 | 根保証なら金額を確定して書く。 | 個人根保証は効力を生じない(465条の2第2項)。 |
| 保証人の氏名・住所 | 自署または記名と押印。法人なら名称と代表者。 | 誰が保証人かが不明確になる。 |
| 作成日 | 保証契約を結んだ日。 | 公正証書の要件や情報提供の時期との前後関係が確認できない。 |
書き方の例(一般的な例) 保証人欄の記載
主たる債務の特定
理由本契約の範囲が、別の書面や口頭の説明に頼らず、保証の書面だけで読み取れるようにする。
保証する旨
理由署名欄の見出しだけでは、保証人が何を引き受けたのかが読み取れない。
主たる債務の特定は、とくに継続的な取引の保証で難しくなります。主たる債務の範囲が広い書き方にしたい債権者の気持ちはわかりますが、範囲を広げるほど、個人が保証人の場合は極度額の規律が強く働き、保証人の意思がどこまで及ぶかの争いにもなりやすくなります。範囲の書き方は根保証と極度額の書き方のページで詳しく扱います。
三つの書面の形:契約書の末尾に署名/保証契約書/承諾書
保証の書面の形は、大きく三つに分けられます。それぞれ長所と注意点があります。
保証の書面の三つの形
| 書面の形 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 主たる債務の契約書の末尾に保証人が署名する | 一通の契約書に、債権者・主たる債務者・保証人が署名する。手続が簡単。 | 保証人が主たる債務の契約内容を全部読めるか。保証の条項が契約書中のどこにあるか。保証人が保証契約の当事者であることが書面から読めるか。 |
| 保証契約書を別に作る | 債権者と保証人の間の契約書。保証の趣旨や範囲を保証人向けに書ける。 | 主たる債務の契約と整合しているか。主たる債務の契約書の写しを添付するか。 |
| 保証人が承諾書・差入書を差し入れる | 保証人が作成して債権者に提出する形。債権者の事務が簡単。 | 債権者が受領した旨が残るか。承諾書の中に保証の趣旨と範囲が書かれているか。書き方が包括的すぎないか。 |
主たる債務の契約書の末尾に保証人が署名する形が最も多く使われますが、注意点が最も多い形でもあります。契約書の条項の多くは、債権者と主たる債務者の間の権利義務を書いたものです。その中に保証人に関する条項が数行あるだけで、保証人の署名欄が末尾に置かれていると、保証人は契約書全体の当事者のように見えます。一方、保証契約の当事者は債権者と保証人であって、主たる債務者との契約の当事者ではないはずです。署名欄の前に、「保証人は、第○条から第○条までの債務について保証する」というように、保証人が引き受ける範囲を明記しておくと、書面の意味が明確になります。
承諾書や差入書の形は、書き方が包括的になりやすい点に注意が必要です。「いかなる事情があっても保証する」「契約内容の変更に異議を述べない」といった書き方は、保証人の負担の範囲について条文の規律との関係が問題になります。この点は保証する範囲と条件変更のページで扱います。
場面別:保証の書面をどこに置くか
貸付けの保証
賃貸借の保証
継続的な取引の保証
保証人が法人の場合も、書面の要件は同じです。法人が保証人になるときは、書面に法人の名称と所在地を書き、代表者が署名または記名押印する形が一般的です。法人の代表者の権限や、取締役会の決議が必要な取引かどうかといった会社内部の手続は、保証契約の有効性に影響する場合がありますが、この点は会社法などの別の法令の条文で確認する領域であり、保証の書面の要件の問題とは切り分けて考えます。
また、契約の変更に合わせて保証の書面を整え直す場面も出てきます。極度額を引き上げる、主たる債務の範囲を広げる、保証期間を延ばすといった変更は、保証人の負担を重くする方向の変更です。民法448条2項は、主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重されても保証人の負担は加重されないと定めているので、負担を重くしたいなら、保証人との間で改めて書面を作る形にするのが基本です。変更後の内容を保証人が読んで署名するという手順を踏めば、書面の要件の趣旨にも合います。
極度額・元本確定期日も書面で定める
個人が保証人となる根保証では、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。そして、極度額の定めにも、書面の要件が準用されます(同条3項により446条2項・3項を準用)。保証契約が書面であっても、極度額の定めがその書面に確定した金額として書かれていなければ、個人根保証契約は効力を生じない、という構造です。
この点で、実務上よく見られるつまずきが二つあります。一つ目は、極度額の欄が空欄のまま署名押印がされることです。契約書の雛形に「極度額は金 円とする」という欄があるのに、金額が書かれないまま署名押印がされる例は、金額が確定していない以上、極度額の定めがあるとはいえないとされるおそれがあります。二つ目は、署名押印の後に、債権者が金額欄を記入することです。保証人の意思に基づく金額かどうかが争われやすく、避けるべき運用です。
貸金等を含む個人根保証(個人貸金等根保証契約)には、元本確定期日の定めもあります。期日を契約締結日から5年を超える日と定めたときはその定めが効力を生じず、定めがなければ締結日から3年を経過する日が元本確定期日となります(同465条の3第1項・2項)。この期日の定めと変更にも書面の要件が準用されます(同条4項)。ただし、締結の日から3年以内の日を元本確定期日とする旨の定めと、元本確定期日より前の日に変更する変更は、書面の要件の準用から除かれています。極度額と元本確定期日の考え方は根保証と極度額のページに譲ります。
書き方の例極度額を確定した金額で書く条項の例
- 保証人は、債務者が本契約に基づき債権者に対して負担する一切の債務について、金○○万円(極度額)を限度として、債務者と連帯して保証する。
- 前項の極度額は、保証人が本契約書に署名押印する時点で、金額が記載されているものとし、署名押印の後に金額を記入し又は変更することはできない。
金額は個々の取引に応じて決めます。条文は金額の決め方の基準を置いていません。
電磁的記録と電子契約:446条3項の使い方
民法446条3項により、保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます。電子契約サービスで保証契約を結んでも、書面の要件を満たすことができます。
電磁的記録でする場合、条文は電子署名の方式を定めていません。したがって、どのような方式の電子署名、あるいはどのような本人確認の仕組みを使えば保証の書面として十分かは、民法446条の文言だけからは決まりません。参考になる法令として、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)があります。同法3条は、電磁的記録であって情報を表すために作成されたものについて、本人による電子署名(本人だけが行うことができるものに限る)が行われているときは、真正に成立したものと推定すると定めています。ここでいう電子署名は、情報が措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであり、改変が行われていないかどうかを確認できるものであること、という二つの要件を満たすものです(同法2条1項)。電子署名の方式と推定の働き方の細部は、同法の条文と所管官庁の資料で確認する必要があります。
確認の問いと理由電子契約で保証を結ぶとき、運用で確かめること
保証人本人が署名した記録が残るか。
電子署名の仕組みによって、署名者が本人であること、改変がないことを確認できるようにする。
保証人が契約内容を読める状態だったか。
書面の要件の趣旨は、保証人の慎重な判断を促すこと。画面の見せ方や、内容を確認した記録も重要。
極度額や主たる債務の特定が、電磁的記録の中に確定した形で記録されているか。
個人根保証の極度額の定めも、446条2項・3項の準用を受ける(465条の2第3項)。
保証人が内容を後から確認し、保存できるか。
保証人が写しを保管できるようにしておくと、のちの争いを減らせる。
署名・訂正・写しの交付:書面を整える実務の流れ
条文が定める書面の要件を満たしたうえで、保証人の意思を確かにするための運用を整えておきます。
保証の書面を整える流れ
事業のための債務の保証では、このほかに公正証書と情報提供の手続が先に必要になることがあります。
署名前の確認項目
- 極度額・主たる債務・連帯の旨が、署名前に書面に書かれている。
- 空欄が残っていない。金額や日付を後から記入する運用になっていない。
- 保証人以外の人が保証人の氏名を代筆していない。代筆の事情があるときは、その理由を書面から確認できる。
- 保証人が複数のときは、各人が自分の書面または署名欄に署名している。
- 保証人が主たる債務の契約書を見ており、保証の範囲を理解している。
- 書面を受け取った日と、保証人に写しを渡した日が確認できる。
書面に不備があると分かったときは、後から整え直すことになりますが、書面を欠いて効力を生じなかった保証を後から追認できるのか、遡って有効にできるのかは、条文だけでは答えが出ません。新たに保証契約を書面で結び直す形で整える場合も、結び直す前の期間の債務をどう扱うか、情報提供や公正証書の前後関係に影響が出ないかを含め、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。後から整えるより、署名の時点で整えておくと、後の争いを避けやすくなります。
起きがちなこと
保証の書面をめぐってよく見られるつまずき
- 貸付けは実行したが、保証人の書面はあとで取ることにして、そのまま取れていない。
- 主たる債務の契約書の末尾に署名欄があるだけで、保証人が何を保証するのか、本文から読み取れない。
- 極度額の欄が空欄のまま署名押印がされ、あとから債権者が金額を記入した。
- 承諾書が「一切の債務を保証する」としか書いておらず、主たる債務が特定できない。
- 保証人以外の人が保証人の氏名を書き、保証人本人の意思表示といえるかが争われた。
- 電子契約で署名したが、保証人が契約内容を確認した記録や、写しを保存できる仕組みがない。
- 口頭やメッセージで「保証する」と言った記録だけがあり、書面がない。
よくあるご質問
メールやLINEで「保証人になります」と返信しただけで、保証は成立しますか。
書面の要件を満たすかどうかは、保証契約の内容を記録した電磁的記録によってされたといえるかによります(民法446条3項)。単に「なります」と返しただけで、債権者・主たる債務者・主たる債務・保証の趣旨が記録されていなければ、保証契約の内容を記録したものとはいえず、効力が認められないおそれがあります。書面(または電磁的記録)で、保証の内容を確定させておく必要があります。
保証人欄に署名押印がない書面は、無効ですか。
民法446条2項は、書面を要求していますが、署名や押印を要件とする文言はありません。ただし、署名押印のない書面は、保証人本人が作成した書面であることや、保証人の意思を示したものであることを後から証明することが難しくなります。実務では署名押印を求めるのが通常です。個別の事案では、書面全体の記載から保証人の意思が読み取れるかが争われます。
主たる債務の契約書の末尾に署名しただけでも、保証人になりますか。
契約書の中に、保証人が保証の責任を負う旨とその範囲が書かれていれば、書面の要件を満たし得ます。ただし、末尾の署名欄だけで保証の趣旨が書かれていないと、保証人としての意思表示が書面に表れているかが争われます。署名欄の前に、保証人が引き受ける債務の範囲と、連帯して保証する旨を明記しておくのが安全です。
極度額の欄が空欄のまま署名押印した場合、保証は有効ですか。
個人根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。その極度額の定めにも書面の要件が準用されるので(同条3項)、金額が書かれていなければ、効力が生じないおそれが高くなります。署名押印の後に債権者が金額を記入する運用は、保証人の意思に基づく金額かどうかが争われやすく、避けるべきです。
電子契約サービスで結んだ保証契約は、書面の要件を満たしますか。
保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます(民法446条3項)。ただし、どの方式の電子署名や本人確認が必要かは、民法446条では決まりません。電子署名法3条は、本人だけが行える電子署名がされた電磁的記録について、真正に成立したものと推定すると定めています。具体的な運用は、同法の条文と所管官庁の資料で確認する必要があります。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の保証契約への当てはめは、契約書の文言、主たる債務の内容、当事者の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。判例や所管官庁の資料は、原文を確認できたものだけを取り上げています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 国土交通省 / 金融庁