このページの要点
- 書面がない、個人根保証に極度額がない、事業のための貸金等債務の保証に公正証書がない場合は、保証は効力を生じない。
- 契約時の情報提供がなく、債権者がそれを知り、または知ることができたときは、保証人は取り消せる(民法465条の10第2項)。
- 主たる債務者への請求による時効の更新は保証人に及ぶが、連帯保証人への請求は主たる債務者に及ばない。
- 請求を受けたら、書面・極度額・公正証書・情報提供・元本確定・時効を書面から順に確かめる。
結論:保証の効力が問われる場面は、「効力を生じない」「取り消せる」「時効」の三つに分けて整理する
保証人に請求書が届いた、保証人になってほしいと言われて署名したがその書面で大丈夫か不安になった、あるいは債権者として保証の書面が足りているか点検したい。保証をめぐる悩みは、突き詰めると、「この保証は効力があるのか」という問いに行き着きます。民法の保証の規定は、この問いに答える材料を、三つの型で用意しています。
保証の効力が問われる三つの型
- 効力を生じない:書面がない(446条2項)、個人根保証に極度額がない(465条の2第2項)、事業のための貸金等債務の保証に公正証書がない(465条の6第1項)など、条文が要件を定めているのに満たしていない場合。
- 取り消せる:契約時の情報提供がなく、または事実と異なる情報が提供され、債権者がそれを知り、または知ることができた場合(465条の10第2項)。錯誤・詐欺・強迫による取消し(95条・96条)もある。
- 時効:債権が一定の期間行使されずに消滅する場合(166条)。主たる債務者について生じた事由が保証人にも及ぶこと(457条1項)と、連帯保証人について生じた事由が及ばないこと(458条・441条)を区別する。
このページは、条文を手がかりにした書類の点検の観点を整理するものです。個別の請求にどう対応するか、支払うかどうか、交渉をどう進めるかといった判断は扱いません。条文は、e-Gov 法令検索で現行のものを確認しています。保証の全体の地図は保証契約の全体像にあります。
効力を生じない場面の一覧:何が欠けると保証は成り立たないか
民法の保証の規定は、保証人を守るために、要件を欠くと保証契約が「効力を生じない」場面を明文で定めています。条文の言葉は「効力を生じない」であり、このサイトでは条文の表現に従います。それぞれの規定が、どの種類の保証に働くかを整理します。
保証が効力を生じない主な場面
| 欠けているもの | 条文 | 働く保証 | 確認する点 |
|---|---|---|---|
| 書面 | 446条2項 | すべての保証契約 | 保証契約の内容を示す書面(または電磁的記録)があるか。 |
| 極度額の定め | 465条の2第2項 | 個人根保証契約 | 極度額が定められているか。 |
| 極度額の定めの書面 | 465条の2第3項(446条2項・3項の準用) | 個人根保証契約 | 極度額が書面(または電磁的記録)で定められているか。 |
| 公正証書による保証意思の表示 | 465条の6第1項 | 事業のための貸金等債務の保証(個人) | 契約に先立ち、締結の日前1か月以内に作成された公正証書があるか。適用除外(465条の9)にあたらないか。 |
| 公正証書の方式 | 465条の6第2項 | 同上 | 口授、筆記と読み聞かせ(または閲覧)、署名押印などの方式が守られているか。 |
| 元本確定期日の定め(貸金等根保証) | 465条の3 | 個人貸金等根保証契約 | 5年を超える期日の定めは効力を生じない。定めがなければ締結日から3年。 |
| 極度額の定め(求償権の保証) | 465条の5第1項 | 法人が保証人の根保証の、求償権の保証 | 法人の根保証に極度額がないとき、求償権に係る債務の保証が効力を生じない。 |
表の最後から二つ目の元本確定期日は、少し性質が異なります。5年を超える元本確定期日の定めは効力を生じませんが、保証契約全体が効力を失うわけではなく、期日の定めがない場合として、締結の日から3年を経過する日が元本確定期日になります(民法465条の3第1項・2項)。
書面の要件については、保証契約が電磁的記録でされたときは書面によってされたものとみなされます(民法446条3項)。メールやメッセージ、電子契約のサービスでの合意がこれにあたるかは、記録された内容が保証契約の内容を示しているか、極度額などの必要事項が記録されているかによります。個別の運用は確認が必要です。また、書面は保証契約が成立するための要件であり、契約書の末尾に保証人が署名しているだけで足りるのか、主たる債務の範囲がどこまで書面から読み取れるのかは、保証契約の書面の要件と書き方で整理しています。
書き方の例(一般的な例) 要件を欠いた書き方と、整えた書き方
書面
理由保証契約は書面でしなければ効力を生じない(民法446条2項)。
極度額
理由個人根保証は極度額が必要で、書面で定める(民法465条の2第2項・3項)。
事業の借入の保証
理由事業のための貸金等債務の保証は、公正証書がなければ効力を生じない(民法465条の6第1項)。
取り消せる場面:情報提供義務の違反、錯誤、詐欺
保証契約が成立していて、書面などの要件も満たしていても、保証人が契約を取り消せる場面があります。最も保証に固有なのが、民法465条の10第2項の取消しです。
保証契約の取消し(民法)
- 465条の10第1項契約時の情報提供事業のために負担する債務の保証を委託するとき、主たる債務者は、財産・収支の状況、他の債務の有無・額・履行状況、他に提供する担保の内容を、委託を受ける人に伝える。
- 465条の10第2項取消しができる場合主たる債務者が情報を提供せず、または事実と異なる情報を提供したために保証人が誤認し、それによって保証の申込みまたは承諾をした場合で、債権者がそのことを知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消せる。
- 465条の10第3項法人には適用なし保証をする者が法人である場合には、1項・2項は適用されない。
- 95条錯誤法律行為の目的・取引上の社会通念に照らして重要な錯誤は、取り消せる。基礎とした事情の錯誤は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限る(95条2項)。
- 96条詐欺・強迫詐欺または強迫による意思表示は取り消せる。第三者による詐欺は、相手方が知り、または知ることができたときに限る(96条2項)。
取消しをするのは、錯誤・詐欺・強迫については、瑕疵のある意思表示をした者(保証人)またはその代理人もしくは承継人に限られます(民法120条2項)。取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされます(同法121条)。取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様です(同法126条)。
債権者の側の備えとして重要なのは、465条の10第2項の「債権者が知り、または知ることができたとき」という要件です。主たる債務者が情報を伝えていないことを、債権者が知ることができた場合に取消しが認められるため、債権者は、保証契約の締結にあたって、主たる債務者が保証人になる人に情報を伝えたかどうかを確認する運用が考えられます。契約書に「情報の提供を受けた」と確認する文言を置くことは多いですが、それは事実を確認する手がかりであって、義務の履行そのものを代わりにするものではありません。詳しくは保証人への情報提供義務を参照してください。
時効:主たる債務者に生じた事由と、保証人に生じた事由を分けて考える
債権は、権利を行使することができることを知った時から5年間、または権利を行使することができる時から10年間、行使しないときは、時効によって消滅します(民法166条1項)。保証債務も債権ですから、時効にかかります。保証の時効で見落とされやすいのは、主たる債務の時効と保証債務の時効が連動する面と、連動しない面があることです。
保証の時効に関する条文
| 場面 | 条文 | 効果 |
|---|---|---|
| 主たる債務者への履行の請求など | 457条1項 | 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予・更新は、保証人にも効力を生ずる。 |
| 連帯保証人にだけ請求したとき | 458条・441条 | 連帯保証人について生じた事由は、更改・相殺の援用・混同を除き、主たる債務者には効力を生じない(相対的効力)。 |
| 催告 | 150条 | 催告の時から6か月間、時効の完成が猶予されるにとどまり、再度の催告に効力はない。 |
| 裁判上の請求など | 147条 | 裁判上の請求等の事由が終了するまで時効は完成せず、確定判決等で権利が確定すれば時効は新たに進行する。 |
| 権利の承認 | 152条 | 権利の承認があった時から、時効は新たに進行を始める。 |
| 時効の援用 | 145条 | 消滅時効は、保証人も援用できる。 |
保証人は、主たる債務者が主張できる抗弁をもって、債権者に対抗できます(民法457条2項)。主たる債務者の債務が時効で消滅していれば、保証人も、時効を援用して、債務を免れる主張ができる立場にあります(同法145条括弧書)。ただし、時効の援用の可否や、承認や一部の弁済が時効に与える影響は、事案によって異なります。判決によって確定した権利は、時効期間が10年となります(同法169条1項)。請求を受けた時点で、主たる債務の時効、保証債務の時効、それぞれの完成猶予・更新の事由がないかを書面から確認することが出発点です。
請求を受けたとき、契約書面から確認すること
保証人に請求が届いたとき、最初にするのは、保証契約の書面を手元に用意して、点検することです。書面の点検の観点を、チェックリストにまとめます。これは、請求を受けたときだけでなく、債権者が自分の保証書面を見直すときにも使えます。
保証契約書面の点検
- 保証契約の書面(または電磁的記録)があるか。保証人の署名または記名押印があるか(446条)。
- 債権者、主たる債務者、保証する主たる債務が、書面から読み取れるか。
- 保証人が個人か法人か。個人の場合、根保証であれば極度額が書面にあるか。署名の時点で記載されていたか(465条の2)。
- 保証の対象が、貸金等債務を含むか。含む場合、元本確定期日の定めは5年以内か、定めがなければ3年となっているか(465条の3)。
- 事業のための貸金等債務の保証か。その場合、締結前1か月以内の公正証書があるか。保証人が適用除外の立場(取締役、議決権の過半数を有する者、共同事業者、事業に従事する配偶者)にあたらないか(465条の6〜465条の9)。
- 事業のための債務の保証の委託を受けたときに、主たる債務者から情報が伝えられていたか(465条の10)。
- 請求の額が、元本、利息、違約金、損害賠償の合計として、極度額に収まっているか(465条の2第1項)。
- 保証人の負担が、主たる債務より重くなっていないか。主たる債務が保証後に加重されていないか(448条)。
- 元本確定事由(保証人や主たる債務者の死亡、保証人の破産など)が生じていないか(465条の4)。
- 時効の完成猶予・更新の事由はあるか。最後の弁済や承認の時期はいつか(166条、147条、152条)。
保証人は、債権者に対して、主たる債務の履行状況に関する情報の提供を請求できる場合があります。保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合に、保証人の請求があったときは、債権者は、遅滞なく、主たる債務の元本と従たるものについての不履行の有無、残額、弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければなりません(民法458条の2)。債権者からの請求書に、残額や内訳が示されていないとき、この規定は、書類の内容を確かめる手段になります。また、主たる債務者が期限の利益を失ったとき、債権者は、知った時から2か月以内に保証人に通知しなければならず、通知しなかったときは、期限の利益を喪失した時から通知までの遅延損害金は請求できません(同法458条の3第1項・2項)。ただし、保証人が法人である場合には、この規定は適用されません(同条3項)。
書き直す、追認するとき:無効な行為は、追認では有効にならない
書面の不備に気づいて、あとから書面を整えたいという場面があります。ここで確認すべき条文が、民法119条です。無効な行為は、追認によっても、その効力を生じません。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなされます。つまり、効力を生じない保証契約を、後から「追認します」と書いても、元の契約が有効になるわけではなく、新たに保証契約を結んだものとして扱われる、ということです。
したがって、書面や極度額が欠けていた保証を整えるときは、追認の書面を作るのではなく、現在の要件を満たす新たな保証契約を結ぶ、という整理が安全です。事業のための貸金等債務の保証であれば、公正証書も新たに必要になり、契約の締結に先立つ1か月以内に作成されたものでなければなりません(民法465条の6第1項)。取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じません(同法124条1項)。追認をすると、以後、取り消すことができなくなります(同法122条)。
保証の書面を見直すときの流れ
追認や書き直しをするかどうか、請求にどう応じるかといった判断は、このページでは扱いません。
よくある質問:条文で答えられる10問
よくある疑問と答え保証の効力に関するよくある疑問
保証人欄に署名してあれば、他に何もなくても保証は有効ですか。
書面の要件(446条2項)は満たし得ますが、それだけでは足りません。個人根保証なら極度額が書面にあること(465条の2)、事業のための貸金等債務なら公正証書(465条の6)が必要です。主たる債務が書面から読み取れることも確かめます。
口頭で「保証人になる」と言った場合は、どうなりますか。
保証契約は書面でしなければ効力を生じません(446条2項)。口頭の合意だけでは、効力を生じないのが原則です。
メールやチャットで「保証します」と送った場合は、書面になりますか。
保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます(446条3項)。どの程度の記録が要件を満たすかは、記録された内容によるため、個別に確認が必要です。
極度額が書かれていない根保証は、どうなりますか。
個人が保証人になる根保証契約は、極度額を定めなければ、効力を生じません(465条の2第2項)。極度額の定めも書面でする必要があります(同条3項)。
署名したあとで、極度額が書き込まれていた場合は?
極度額の定めは書面でしなければならないため(465条の2第3項)、保証人が署名した時点で極度額が記載されていたかどうかが重要になります。書面の作成の経過を確認します。
保証人が複数いるとき、各人が全額を払うのですか。
通常の保証で数人あるときは、456条により、別段の意思表示がなければ等しい割合での負担になります(427条)。連帯保証人が分別の利益を持つかは条文だけでは答えが出ないため、契約書に各自が全額を負うのか、限度があるのかを明記します。
主たる債務者の財務状況を知らされずに保証したときは、取り消せますか。
事業のために負担する債務の保証では、主たる債務者に情報提供義務があり、情報が提供されず、または事実と異なる場合に、債権者がそれを知り、または知ることができたときは、取り消せます(465条の10第2項)。居住用の賃貸借の保証などは対象外です。
保証債務の時効は、いつから数えますか。
債権は、権利を行使できることを知った時から5年間、行使できる時から10年間で消滅します(166条1項)。主たる債務者への請求などによる時効の完成猶予・更新は、保証人にも及びます(457条1項)。
一部を払うと、時効はどうなりますか。
権利の承認があった時から、時効は新たに進行します(152条1項)。何が承認にあたるかは事情によるため、個別に確認が必要です。
保証人が法人の場合は、規律が違いますか。
違います。極度額(465条の2)は個人根保証に限られ、公正証書(465条の6第3項)、契約時の情報提供(465条の10第3項)、期限の利益喪失の通知(458条の3第3項)は、保証人が法人の場合は適用されません。
保証のトラブルで起きがちなこと
- 署名があれば足りると考え、極度額や公正証書の有無を確かめていない。
- 要件を欠いた保証を、追認の書面で有効にできると考えている。
- 保証人にだけ請求して、主たる債務の時効が進んでいることを見落とす。
- 請求の額が、極度額を超えているのに気づかない。
- 主たる債務者から情報を受けていないのに、「情報提供を受けた」という確認文言に署名している。
- 個人と法人で規律が違うことを区別せずに、書面を作っている。
よくあるご質問
書面に不備があれば、保証人は払わなくてよいのですか。
条文は、書面がないとき(446条2項)、個人根保証で極度額がないとき(465条の2第2項)、事業のための貸金等債務の保証で公正証書がないとき(465条の6第1項)には、保証契約は効力を生じないと定めています。不備の内容がこれらにあたるかを、書面から確かめることが出発点です。個別の請求への対応や交渉は、このサイトでは扱いません。
保証契約を結び直すときの注意点は何ですか。
無効な行為は追認によっても有効にならず、無効と知って追認したときは新たな行為をしたものとみなされます(民法119条)。そのため、追認の書面ではなく、書面、極度額、必要な公正証書を備えた新たな保証契約を結ぶ整理が安全です。公正証書は、締結の日前1か月以内に作成されたものが必要です。
保証契約を取り消せる期間はありますか。
取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様です(民法126条)。取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされます(同法121条)。
請求書が届いたとき、まず確認すべき書類は何ですか。
保証契約の書面そのものです。署名の有無、主たる債務の特定、極度額、公正証書の有無、保証人が個人か法人か、元本確定事由の有無を確かめます。保証人が委託を受けていれば、債権者に主たる債務の履行状況の情報を請求することもできます(民法458条の2)。
事業の借入を保証したのに公正証書がない場合は、どうなりますか。
事業のために負担した貸金等債務の保証は、公正証書で保証意思を表示していなければ、効力を生じません(民法465条の6第1項)。ただし、保証人が主たる債務者である法人の取締役などにあたる場合は、公正証書の規定の適用除外です(同法465条の9)。保証人の立場を確かめる必要があります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の保証契約への当てはめは、契約書の文言、主たる債務の内容、当事者の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。判例や所管官庁の資料は、原文を確認できたものだけを取り上げています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 国土交通省 / 金融庁