このページの要点
- 保証債務は、利息・違約金・損害賠償その他の従たるものを含む(447条1項)。個人根保証では極度額が全体の上限。
- 保証債務についてだけの違約金は約定できるが(447条2項)、主たる債務より重い態様の負担は減縮される(448条1項)。
- 契約後に主たる債務が重くなっても、保証人の負担は加重されない(448条2項)。重くなった分は書面で合意を取り直す。
- 包括同意の一文に頼らず、軽くなる変更は通知、重くなる変更は書面の同意、と書き分ける。
結論:保証人の負担は主たる債務を超えず、契約後に重くなった分には及ばない
保証債務は、主たる債務に付き従う債務です。民法は、保証債務の範囲について三つの基本線を置いています。第一に、保証債務は主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを含みます(447条1項)。第二に、保証人の負担が、債務の目的または態様において主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮されます(448条1項)。第三に、主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重されても、保証人の負担は加重されません(同条2項)。
保証の承諾書や保証条項で「内容が変わっても保証する」「条件の変更に事前の同意の有無にかかわらず異議なく同意する」と書く例は、実務でよく見られます。しかし、この書き方が、448条2項の定める「加重されない」という結論を、そのまま動かせるとは限りません。このページは、保証する範囲をどう書き分けるか、条件の変更をどう扱うかを、条文に沿って整理します。
- 保証債務は、元本だけでなく、利息・違約金・損害賠償その他の従たるものを含む(447条1項)。個人根保証では、極度額が全体の上限になる。
- 保証債務だけについて、違約金や損害賠償の額を約定することはできる(447条2項)。ただし、保証人の負担を主たる債務より重くする書き方とは区別する(448条1項)。
- 契約後に主たる債務が重くなっても、保証人の負担は重くならない(448条2項)。重くなった後の債務まで保証するには、保証人の書面による合意を取り直す。
- 事前の包括的な同意条項は、保証人が内容を知らない将来の変更まで含む書き方になるため、効力の限界を前提に書く。
極度額の定めと元本確定は根保証と極度額の書き方、書面の要件は書面の要件と書き方のページで扱います。連帯保証になったときに失われる抗弁権は連帯保証の効力のページが詳しく説明しています。
保証債務の範囲:元本だけでなく従たるものを含む(447条1項)
保証人は、主たる債務者が履行しないときに、その履行をする責任を負います(446条1項)。その責任の中身が、447条1項の「主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの」です。契約書で「元本及び利息」としか書いていなくても、主たる債務に利息や違約金の定めがあれば、保証債務はそれらを含みます。反対に、保証の範囲を限定したいときは、書面でその旨を明示します。
「その他その債務に従たるすべてのもの」の範囲は、主たる債務の契約に何が定められているかで決まります。主たる債務者が回収費用を負担する旨が主たる契約に定められていれば、その費用は従たる債務として保証の範囲に入り得ます。しかし、主たる債務者が負担しない費用を、保証人だけが負担する形にするには、447条2項の、保証債務についてのみ違約金や損害賠償の額を約定する仕組みを使うことになります。
保証債務の範囲の項目ごとの整理
| 項目 | 主たる債務との関係 | 契約書で確認すること |
|---|---|---|
| 元本 | 主たる債務の元本そのもの | 主たる債務が特定できる書き方か(債務の発生原因、契約の特定) |
| 利息 | 主たる債務に利息の定めがあれば従たるもの | 主たる債務の利率が、保証人に示されているか |
| 遅延損害金 | 主たる債務の遅延損害金は従たるもの | 遅延損害金の率が、保証人に示されているか |
| 違約金・損害賠償 | 主たる債務に関する分は従たるもの(447条1項)。保証債務についてだけ約定する分は447条2項 | 主たる債務の違約金と、保証債務の違約金を区別して書いているか |
| 回収にかかる費用 | 主たる契約で主たる債務者が負担すると定めていれば従たるもの | 費用の種類と、主たる契約の定めが対応しているか |
| 追加の貸付・取引 | 新たに生じる別の債務は、特定の債務の保証には含まれない | 根保証として極度額を置いたうえで範囲に含めているか |
範囲を書くときの出発点は、保証人に何を示したかです。保証契約は書面でしなければ効力を生じません(446条2項)。書面に主たる債務の内容が書かれ、保証人がそれを読んで署名したといえる形でなければ、範囲に含まれるものの主張に無理が出ます。主たる契約書の末尾に署名欄を設ける形のほか、別紙の承諾書に主たる債務を書く形も、この観点で選びます。
保証人の負担は主たる債務より重くならない(448条1項)
448条1項は、保証人の負担が債務の目的または態様において主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮すると定めます。保証債務は主たる債務に従うので、保証だけが主たる債務より厳しい条件を負わされることはありません。「目的」は債務の内容、「態様」は履行の期限、条件、場所、方法などを指します。
たとえば、主たる債務は分割払いなのに、保証債務は一括払いとして請求できるという書き方は、態様が主たる債務より重くなる例です。主たる債務に期限の猶予があるのに、保証人にはその猶予が及ばないという書き方も、同じ問題になります。こうした書き方は、書面に書いたとしても、主たる債務の限度に減縮される余地があります。
他方、447条2項は、保証人が保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を約定できると定めます。主たる債務とは別に、保証債務の不履行について違約金を定めることは、条文上認められています。448条1項は「主たる債務より重い」書き方の限度を定め、447条2項は保証債務の不履行そのものに対する約定を認める、という役割分担です。個人根保証では、保証債務について約定した違約金も極度額の全体の中に含まれます(465条の2第1項)。
書き方の例(一般的な例) 保証債務の負担の書き方
履行の態様
理由保証人の負担が態様において主たる債務より重いと、主たる債務の限度に減縮される(448条1項)。
違約金
理由保証債務についてのみ違約金を約定することはできる(447条2項)。個人根保証では全体が極度額の限度になる(465条の2第1項)。
費用
理由従たるものは主たる債務に付き従う(447条1項)。主たる債務にない費用を保証人だけに負担させる書き方は、448条1項との関係で整理が必要。
契約後に主たる債務が重くなったとき(448条2項)
448条2項は、主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されないと定めます。保証人は、保証契約を結んだ時点の主たる債務を前提に、保証するかどうかを決めています。後から主たる債務者と債権者が合意で債務を重くしても、保証人にその重さを負わせることはできないということです。
重くなる変更の典型は、次のようなものです。利率の引上げ、返済期限の前倒し、分割払いの金額の増額、違約金の引上げ、期限の利益の喪失事由の追加などです。いずれも、主たる債務者と債権者の間では有効に合意できても、保証人の負担は、変更前の内容のままとなります。
反対に、主たる債務が軽くなる変更は、付従性により、保証人にも及ぶのが原則です。債務の一部を免除したり、返済の期限を猶予したりした場合に、保証人だけがもとの条件で請求される、ということにはなりません。条文の細かい当てはめは、変更の中身で異なるため、個別に確認します。
個人根保証では、447条の範囲の考え方に、極度額という全体の枠が重なります。元本、利息、遅延損害金、違約金、費用のそれぞれが従たるものとして保証の範囲に入っても、合計が極度額を超える部分には保証人の責任が及びません(465条の2第1項)。そのため、根保証の条項では、「範囲」の欄に項目を並べるだけでなく、「極度額の範囲内で」という限定を、同じ条項の中に書いておきます。範囲の欄と極度額の欄が別々の条項に離れていると、保証人は、自分が負う上限を一読して把握できません。
変更の種類ごとに見る、保証人の負担
返済期限の猶予
利率・違約金の引上げ
追加の貸付・取引
分割の回数・金額の変更
保証人が、重くなった後の債務について保証する意思を示すなら、それは新しい保証の合意です。保証契約は書面でしなければ効力を生じないため(446条2項)、変更後の債務の内容を示し、保証人が書面(または電磁的記録)で同意する形にします。口頭で「承知した」と言われたことや、通知書への無言の受領では、書面の要件を満たしません。
「事前の同意の有無にかかわらず異議なく同意する」という書き方の限界
保証の承諾書や保証条項で、次のような書き方がよく見られます。「契約の条件が変更された場合であっても、事前の通知・同意の有無にかかわらず、変更後の債務についても連帯保証責任を負うことに異議なく同意する」。債権者の側から見れば、主たる債務の条件変更のたびに保証人の同意を取り直す手間を省ける書き方です。しかし、この書き方が、448条2項の結論をそのまま動かせるかは、慎重に見る必要があります。
理由は三つあります。第一に、保証契約は書面でしなければ効力を生じません(446条2項)。保証人がどの範囲の債務を負うかが、書面から読み取れることが前提です。内容が示されていない将来の変更まで、包括的に同意したとする書き方は、この前提との関係が問題になります。第二に、448条2項は保証人を保護する趣旨の規定であり、それを承諾書の一文で広く排除する書き方は、効力を争われる余地があります。第三に、保証人が個人で、事業としてでなく契約し、相手方が事業者である場合は、消費者契約法の適用が問題になり得ます(同法2条)。同法10条は、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し義務を加重する条項で、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とします。
これらの点から、実務では、包括同意の一文に頼る書き方を改め、変更の範囲と手続を限定する書き方が選ばれます。軽くなる変更(期限の猶予、一部免除、担保の追加)は、保証人に不利にならないので、通知だけで足りる形にします。重くなる変更(金額の増額、利率・違約金の引上げ)は、変更後の内容を示して、保証人の書面による同意を取り直す形にします。
変更の通知を受けたことを、保証人が書面で確認する欄を設ける方法もあります。通知書に受領の署名欄を付け、返送を受けた記録を保管しておくと、いつ、どの内容の変更を保証人に知らせたかが、後から確認できます。保証人が受領の署名を拒んだ場合に備えて、通知の発信日と方法の記録を保管する運用も併用します。通知を受けた時点で、保証人が負担の範囲を理解したといえる状態をつくることが、条項と運用に共通する目標です。
書き方の例(一般的な例) 変更への同意条項
同意の範囲
理由448条2項(加重されない)と446条2項(書面)との関係。同意の範囲が内容の分からない将来の変更に及ばないようにする。
通知
理由保証人が自分の責任の範囲を把握できる。通知は、書面で行い、到達を確認できる方法にする。
書き方の例主たる債務の変更と保証人の関係を整える条項の例
- 甲と乙が、主たる債務の弁済期の猶予、債務の一部の免除その他、保証人の負担を軽くする変更をしたときは、保証人の負担もその限度で変更される。甲は、変更の内容を遅滞なく保証人に書面で通知する。
- 甲と乙が、主たる債務の元本の増額、利率又は違約金の引上げその他、主たる債務を重くする変更をしたときは、保証人は、変更前の主たる債務の限度でのみ責任を負う。保証人が変更後の債務についても保証する場合は、変更後の内容を示した書面に、保証人が署名又は記名押印した場合に限る。
特定の契約の引用ではなく、一般的な書き方の例です(甲は債権者、乙は主たる債務者)。個人根保証では、極度額の増額も、書面による同意を取り直す対象に含めます。
主たる債務者に生じた事由が保証人に及ぶ場合(457条)
範囲と変更の問題と並んで、主たる債務者に生じた事由が保証人にどう及ぶかを、条項の書き方に反映させる必要があります。457条は、三つのことを定めます。
主たる債務者に生じた事由と保証人(民法457条)
- 1項時効の完成猶予及び更新主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても効力を生ずる。
- 2項主たる債務者の抗弁保証人は、主たる債務者が主張できる抗弁をもって債権者に対抗できる。
- 3項相殺権・取消権・解除権主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権、解除権を有するときは、その権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度で、保証人は債務の履行を拒める。
これらは、保証人が主たる債務と別のところで責任を負うのではなく、主たる債務に付き従うことの表れです。契約書の条項で、保証人にこれらの権利を放棄させる書き方をする例がありますが、放棄の範囲と、保証人に伝える内容は、446条2項の書面に表れていなければなりません。特に個人の保証人が相手のときは、権利の放棄が広すぎないかを、先に述べた消費者契約法の観点で見ておきます。
範囲と変更を条項に落とし込む手順
ここまでの条文を、契約書の条項にするときの手順を整理します。
保証の範囲と変更を書く手順
確認の問いと理由範囲と変更の条項を書く前の確認
保証人に示す書面に、主たる債務の内容が書かれているか。
範囲に含まれるものの主張は、保証人に何を示したかに左右される。
利息・遅延損害金・違約金の率や額が、保証人に見える形になっているか。
従たるものは保証の範囲に入るが、示されていなければ保証人の理解と食い違う。
主たる債務の変更があり得る取引か。
あり得るなら、変更の種類ごとの扱いを先に決めておく。
包括同意の一文に頼っていないか。
内容の分からない将来の変更まで同意したとする書き方は、効力を争われる余地がある。
変更を保証人に知らせる手順があるか。
知らせる手順がないと、保証人が責任の範囲を把握できず、紛争の種になる。
範囲と条件変更の条項で起きがちなこと
範囲と条件変更の条項で起きがちなこと
- 承諾書に「一切の債務」とだけ書いて、主たる債務の内容を保証人に示していない。
- 主たる債務は分割払いなのに、保証人には一括払いを前提に書いている。
- 保証債務についてだけ約定した違約金が、極度額の中に入るのかが書面から分からない。
- 主たる債務者と債権者が利率や金額を見直したのに、その内容を保証人に知らせず、変更後の額を請求している。
- 「事前の同意の有無にかかわらず異議なく同意する」の一文だけで、重くなった変更後の債務まで請求できると考えている。
- 軽くなる変更(期限の猶予など)を、保証人にだけ従前の条件で請求している。
- 主たる債務者に生じた事由(時効、抗弁、相殺権等)を、保証人に説明する書面がない。
よくあるご質問
保証人は、利息や遅延損害金も払わなければなりませんか。
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを含みます(民法447条1項)。主たる債務に利息や遅延損害金の定めがあれば、保証人の負担に含まれるのが原則です。ただし、個人根保証では、これらを含めた全体が極度額を超えることはありません(465条の2第1項)。
主たる債務者が、貸付の金額を増やしてもらったとき、保証人はその増額分も保証しますか。
契約後に主たる債務の目的または態様が加重されても、保証人の負担は加重されません(民法448条2項)。増額分は、原則として保証人の負担に含まれません。増額後の債務まで保証するには、変更後の内容を示して、保証人が書面(または電磁的記録)で保証する旨を新たに合意する必要があります(446条2項・3項)。
保証人にだけ違約金を定めることはできますか。
保証人は、保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を約定できます(民法447条2項)。ただし、保証人の負担が主たる債務より重いと評価される書き方は、主たる債務の限度に減縮されます(448条1項)。個人根保証では、保証債務について約定した違約金も、極度額の全体の中に含まれます。
承諾書に「変更に異議なく同意する」と書いてあれば、条件が重くなっても請求できますか。
448条2項が、加重されても保証人の負担は加重されないと定めており、内容の分からない将来の変更まで包括的に同意したとする書き方が、そのまま効力を持つかは慎重に見る必要があります。保証人が事業としてでなく個人として契約した場合は、消費者契約法10条との関係も問題になり得ます。重くなる変更は、変更後の内容を示して書面の同意を取り直すのが、有力な材料になります。
主たる債務者への請求は、保証人にも時効の面で影響しますか。
主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は、保証人に対しても効力を生じます(民法457条1項)。また、保証人は、主たる債務者が主張できる抗弁をもって債権者に対抗できます(同条2項)。時効の期間そのものは、民法166条(債権は、知った時から5年、権利を行使できる時から10年)が基準です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の保証契約への当てはめは、契約書の文言、主たる債務の内容、当事者の事情によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。判例や所管官庁の資料は、原文を確認できたものだけを取り上げています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 国土交通省 / 金融庁